2006.03.26 Sunday
『プラド美術館展』@東京都美術館
まずは14時から記念講演『プラド美術館の歴史』に出席。講師のフアン・J・ルナ氏(Juan J. Luna)は国立プラド美術館学芸員、18世紀絵画室長をされているそうで、通訳を通してスペイン語での講演となりました。詳しい内容は図録にも記載されていますが、美術館創設に至った経緯や戦争の影響など現在に至るまでの200年近い長い歴史の重みが感じられます。
実はその前に上野公園で軽く食事をしてきたのですが、なんとそこではろるどさんに遭遇!なんという奇遇か、とお互いびっくりの出来事がありました(*^^)
展示内容の方は本当に素晴らしい作品ばかりで、良いと思った作品だけ挙げ出すにも切が無いほど。エル・グレコ、ベラスケス、ティツィアーノ、ルーベンス、ゴヤといった誰もが知っている巨匠についてはここで解説するまでも無いので、あまり聞いたことの無い画家で印象の残ったものを少しだけご紹介しておきます。
《El Salvador bendiciendo》
「祝福する救世主」
Francisco de Zurbara`n(1598-1664)
1638
Oil on canvas
100x72cm
フランシスコ・デ・スルバランはバロック期のスペインの画家で、宗教的モチーフを優れた明暗表現で描いたことで知られているそうです。本作は「世の救い主」という伝統的な図像を本にしたものですが、イエスの手の表現などは非常に素晴らしい描き方で、全体的に見たバランス感も良いものがあると感じました。
《El Tra`nsito de la Mari`a Magdalene》
「マグダラのマリアの被昇天」
Jose` Antoli`nez(1635-1675)
1670-1675
Oil on canvas
205x163cm
ホセ・アントリーネスは17世紀後半のマドリード派の画家で、ベラスケスの後継者の一人にも数えられるとのこと。空の色やマグダラのマリアの着衣など、複数の異なる青が非常に目に映えます。「マグダラのマリアの被昇天」というモチーフは初めて目にしたのですが、これは13世紀のヤコブ・ダ・ヴァラギネによる『黄金伝説』から採られたものだそうです。ちなみに『黄金伝説』におけるマグダラのマリアの記述については、alice-roomさんの「叡智の禁書図書館」に日本語訳(こちら)があるのでご参考まで。
《La Inmaculada Concepcio`n de #El Escorial"》
「エル・エスコリアルの無原罪の御宿り」
Bartolome` Esteban Murillo(1618-1682)
1660-1665
Oil on canvas
206x144cm
バルトロメオ・エステバン・ムリーリョはバロック期のスペインの画家で、セビーリャ周辺で活躍したことで知られています。一見して「聖母マリアの被昇天」を思わせるモチーフですが、聖母マリアや天使の表情はロココ調を先取りしているかのように、優雅さが見て取れます。とても大きな作品で、目の前にした迫力にも圧倒されました。
《Santa Margarita resucita a un joven》
「若者を生き返らせる聖マルガリータ」
Giovanni Serodine(1600-1630)
1620-1625
Oil on canvas
131x100.5cm
ジョヴァンニ・セローディネは17世紀初頭のイタリアの画家で、光の明暗によるドラマチックな表現が知られているそうです。この作品の、特に少年の頭部と肌の描き方はまるでカラヴァッジョを見ているようで、実際にカラヴァッジョのシチリア期に帰属するという見解もあるとか。非常に美しい作品で、他の巨匠と比べても遜色ありません。
と見て来たように、今回はバロック期の画家が多いような印象を受けました。非常に見ごたえある展覧会で必ずもう一度来たいと思います。
■プラド美術館展:@http://event.yomiuri.co.jp/2002/S0126/main.htm
りゅうさん、大きな作品ばかりでしたね。
逆に言えば、あの大きさが当時の絵画の標準サイズで、小さなサイズのものは個人宅用だったりと特殊だったのではないでしょうか。
それにしても本当に何時いっても混んでますね〜